医療安全対策

病理診断科 医療安全対策 部内ミーティング

平成20年8月25日(月)病理検査における医療ミスと対策
- 岡山済生会病院 検体取り違え事例を教訓に

はじめに - 病理診断業務における医療過誤の特徴

病理検査における医療事故は
(1) 患者の治療に直結する
(2) 人為的ミスに起因することが多い
(3) 検査依頼側との連携不足
が特徴的である。

特に (1) に関して、病理診断は疾病の確定診断を担っており、患者の治療そのものに大きく影響を及ぼすため、検査室内における検体の取り違えや紛失・診断に関わるミスなどは起こしてはならないものであるとの心構えが必要であり、発生したミスを誤診・医療過誤に結びつけない細心の注意が求められる。
 当科・検査室ではこうした点に注意し、常日頃から標本作製・診断業務を行っているが、医療事故に直結するミスを絶対起こさない確証はなく、常に細心の注意を払う必要がある。
 そこで今回、間違いのない、精度の高い業務を維持するためにも岡山の病院で起きた、検体取り違えによる医療過誤の事例をもとに話し合いを持ち、よりミスのない診断業務の再確認を行った。

事例:検体取り違え、別人の乳房を切除 - 岡山済生会病院

 岡山済生会総合病院(岡山市、糸島達也院長)は 19 日、乳がん検診を受けた県内の 40 歳代女性の左乳房を間違って切除していたと発表した。

  検体を、乳がん患者と取り違えたのが原因で、女性はがんではなかった。
病院は、女性に謝罪したが、女性は納得せず、双方が弁護士を通じて話し合いを続けている。
 病院の説明では、昨年 7 月、この女性に胸部エックス線撮影などをしたところ、乳がんが疑われ、翌 8 月中旬に顕微鏡による組織検査を行った。その際、臨床検査技師が、検体を載せるスライドガラスに、乳がん患者の識別番号を誤って書き込んでいた。検査をもとに 9 月中旬に女性の左乳房をすべて切除したが、切除した部分を検査すると、がんではないことがわかった。
 一方、乳がん患者は一度はがんではないとの診断を受けたが、取り違えが判明した後、乳房の一部を切除する手術を受けた。糸島院長はこの日、記者会見し、「女性には、心身に大きな傷を負わせてしまい、心よりおわびします」と述べた。
(2008 年 8 月 19 日 読売新聞より)

検体取り違えによる医療事故の最近の事例

国立がんセンター:肺癌(2005年9月)

手術前の細胞診検査で、同じ日に検査施行した別患者の検体の一部が混入し、陽性と診断されたため、肺が切除された事例。

埼玉医科大学病院:甲状腺癌(2006年3月)

別患者の検体と取り違え、甲状腺を摘出。
細胞診検査で同じ日に検査施行した患者の検体と取り違えて、臨床検査技師が名前のラベルを貼付したことに起因。

病理標本作成、診断過程における誤りと対策

(1) 検体受付:

  依頼書と検体が一致しているかどうかの確認不足。
   →確認作業を怠りなく行う。不備不明な点はその場で確認する。
  検体容器ラベルの確認、検体の内容、採取部位、個数等。
   →検体容器は捨てずに取っておく。
   →受付登録時、同一臓器の検体が連続しないように登録する。

(2) 切り出し、生検材料の処理:

  依頼書と検体が一致しているかどうかの確認不足。
   →確認作業及び検体の模式図を依頼書に記載する。
   →切り出し図の記載をきちんと行う。
  カセットナンバリングの誤り。→確認作業
  コンタミネーションによる組織の混入。
   →切り出し時、切り出しナイフを良く拭いて使用する。
   →検体に触れた器具(ピンセット等)は良く拭いて使用する。

(3) 包埋:検体の紛失。→細心の注意を払う。

  コンタミネーション
   →検体に触れた器具(ピンセット等)は良く拭いて使用する。

(4) 薄切:薄切切片の取り違え。コンタミネーション。

   →スライドガラスの番号とカセット番号の照合を充分行う。
   →ひとつのブロックに対して、ひとつのタッパーを使用する。

(5) 染色:染色時のコンタミネーション。

   →染色液を定期的に交換する。
   →コンタミネーションを生じそうな検体の染色後は、染色液を交換する。

(6) 検体ラベルの貼付:

  依頼書と検体の確認不足。
  検体ラベルの貼り間違い。
   →スライドガラスと依頼書の番号、検体の個数、検体の大きさ、形を照合してラベルを貼付する。

(7) 診断時:診断入力時の検体取り違え。

   →スライドガラスと依頼書の番号、患者名、検体の個数、内容を照合する。
   →診断入力時は必ずバーコードを読み取らせて入力する。

防止対策のまとめ

(1) 各過程での確認作業を怠りなく、細心の注意を払い行う。
(2) 各作業の掛け持ちは行わない。
(3) 業務中は極力私語を慎む。
(4) 検体受付時に同じ臓器の検体が連続しないように登録する。
(5) 生検標本をカセットにいれる際には依頼書に検体の絵を記載する。
(6) 検体受付時、検体ラベル貼付時、診断入力時には依頼書と検体の番号だけでなく、
  内容(個数、大きさ、形等)も確認する。

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