原発不明癌の病理診断における免疫染色の有用性について (2011/04)

 転移巣の原発病変を組織形態のみから推定することは必ずしも容易ではなく、特に原発不明癌の場合は診断に苦慮することが少なからず経験される。そうした場合に免疫組織化学染色は有用な情報を得ることのできる方法のひとつである。サイトケラチン 7 (CK7) と20 (CK20) のパターンから、原発巣の絞り込みを行うことが基本となるが、組織特異的なマーカーを追加することで、より高確率に原発巣の推定を行うことが可能である。

 組織特異的なマーカーとしては TTF-1, surfactant apoprotein (SPA), CDX2, villin, GCDFP-15, PSA, CA125等が候補として考えられるが、これらのマーカーをパネルとして用い、判断することが有用である。

 以下に各種癌における各マーカーの陽性率と診断のフローチャートを示す。 CK7/20に加え、数種類のマーカーで診断が可能であり、一般病院の病理検査室でも日常的に行える点において実用的であると考えられる。原発不明癌の診断は、推定臓器に病変が存在している(あるいはしていた)ことが前提であり、形態診断を無視して診断を決定することは出来ないが、診断の補助として免疫染色のパネルは有用である。逆に推定臓器が充分に検索されていない場合には、診療科に精査する部位を指示するのも病理医の役割であり、その際にもこれらのパネルが役に立つと考えられる。